おんじぃのへや 知立市

今回取材に応じてくださった塚本訓崇先生は、かつて銀行で働いていた異色の経歴を持つ理学療法士。彼が臨床実習に挑んでいた頃、思い悩む日々が続き、理学療法士としての夢を一度は諦めかけたこともありました。しかし、運命的な出会いが彼の進むべき道を照らし出します。その出会いの相手が、そう長谷川昌弘先生です。

長谷川先生は、医療の制度上の制約でリハビリを続けることができない「リハビリ難民」を救いたいという強い思いで、「おんじぃのへや」を創立しました。病院勤務時代から、その熱意は並外れたもので、周囲との衝突も少なくなかったそうです。たとえば、退院前の家屋調査の際には、ただの調査にとどまらず、家の近くの線路を渡って先輩に叱られたこともあったとか。「難しいからってやらないのはおかしい」と、長谷川先生は飄々と語りますが、その裏には患者の期待を超える結果を出すための準備と研鑽がありました。

この長谷川イズムに触れた塚本先生は、再び理学療法士への情熱を取り戻し、「おんじぃのへや」での勤務を決意します。当時、新卒で病院以外の施設に就職することは非常に珍しく、教員からもあまり薦められることはありませんでした。それでも、塚本先生は長谷川先生の背中を追い、そのイズムを継承していくことを心に決めたのです。

塚本先生が「おんじぃのへや」に勤め始めて数年後、彼の人生を大きく変える出会いが再び訪れます。右半身に麻痺を抱え、普段は車いすで移動していた利用者さんが、どうしても競馬場まで自分の足で歩きたいという夢を抱いていました。競馬が大好きなその方の思いを受け、塚本先生は日々のリハビリに加えて、その夢を実現するための具体的なプランを練り上げました。

当日、駐車場から競馬場への道のりは1時間かかりましたが、その方は自分の足で歩ききりました。その後も馬券を買ったり、食事やお酒を楽しんだり、一日中付き添いながら、塚本先生はその方が自身の足で歩くという夢の実現をサポートし続けました。この経験を通じて、塚本先生は「これこそがリハビリの本質だ」と確信します。

また、別の利用者さんには、娘さんの結婚式でバージンロードを自分の足で歩きたいという願いを叶えるために全力を尽くしました。リハビリを通じて、病気をきっかけに10年近く外出できなかった方が、大好きなラグビー観戦を再び楽しむことができるようになったこともあります。これらの経験は、塚本先生が専門家としての技術と知識を磨き、利用者さんの夢を叶えるためにどれほどの努力が必要かを教えてくれました。

目標を達成した利用者さんたちは、その後どうなるのでしょうか？「体の維持のために通い続ける？いや、そんなことはありません」と塚本先生は笑顔で語ります。目標を達成すると、次なる目標が生まれ、さらに高みを目指していくのです。

さらに「おんじぃのへや」には、長谷川イズムを受け継いだ心強い仲間たちがいます。それぞれが異なる専門分野で高い技術を持ち、利用者一人ひとりの夢や希望に全力で応えています。脳卒中や運動器の専門家、ヨガやピラティスのインストラクターなど、多岐にわたる専門家がチームを組み、幅広い視点で利用者に寄り添っています。

このように、「おんじぃのへや」では、利用者の夢に寄り添い、期待を超える結果を生み出すための旅が、日々続けられているのです。